2019年4月からスタートした在留資格「特定技能」制度。
なぜ在留資格「特定技能」が誕生したのか、「特定技能」追加に伴う変化、特定技能の種類、受け入れられる業種など、「特定技能」制度をさらに詳しく解説します。

制度創設の目的は日本の深刻な「人手不足」の解消

 特定技能は、技能実習制度と異なり、純粋に「人手不足の解消」を目的としています。

制度創設の背景

1.人手不足の現状
 法務省によると、有効求人倍率の高さは、全都道府県で1を超える状態が続いており、2018年9月の有効求人倍率は1.64倍。10人の求人に対し、約6人しか応募がないこととほぼ同じとなり、事態がいかに深刻であるかが分かります。

2.多様な人材を活用する働き方改革
 さらに、日本人の労働力人口は「少子高齢化」によってさらに少なくなっていくことが見込まれています。具体的には、年間で約60万人ずつ少なくなっていくとされています。
 特に「働き盛り」の年代に当たる人口の割合が非常に少ないため、女性や高齢者、障害者など、多様な人材を活用すること、そのための環境を整えることが早急の課題です。その中には「外国人人材」の活用も含まれます。
 今後の日本において働き手を確保する上で、能力のある外国人労働者を活用することは必要不可欠な選択肢となっています。

特定技能の2つの資格「1号」「2号」

特定技能にはさらに「1号」と「2号」があります。
建設業等については、特定技能1号の5年間を修了することで特定技能2号に移行することができます。

【特定技能1号】

定義 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
在留期間 1 年、6 か月又は4か月ごとの更新、通算で上限5年まで
技能水準 相当程度の知識又は経験 ※試験で確認(技能実習2 号を良好に修了した者は試験免除)
日本語能力
水準
日本語能力を試験で確認 ※日本語レベルN4(技能実習2 号を良好に修了した者は試験免除)
その他要件 ・保証金の徴収、違約金契約がないこと
・自らが負担する費用がある場合、内容を理解していること
家族帯同 基本認められない
支援対象可否 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象
受入れ
可能な分野
【計14業種】
介護、ビルクリーニング、外食業、農業、飲食料品製造業、漁業、建設、宿泊、造船・舶用工業、自動車整備、航空、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子 情報関連産業

※日本語レベル N4・・・基本的な日本語をある程度理解できるレベル

 特定技能1号は、通算で5年間労働することで在留資格としての期限を満了します。その際一度は帰国する義務があり、また、家族の帯同などは認められていません。

特定技能外国人の受け入れが可能な14分野(特定産業分野)
産業分野 従事する業務内容
介護 身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)、これらに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)
ビルクリーニング 建築物内部の清掃
素形材産業 鋳造 ・金属プレス加工 ・仕上げ ・溶接 ・鍛造 ・工場板金 ・めっき ・機械保全 ・機械加工 ・アルミニウム陽極酸化処理・機械検査 ・ダイカスト・塗装
産業機械製造業 鋳造 ・塗装 ・仕上げ ・電気機器組立て ・溶接 ・鍛造 ・鉄工 ・機械検査 ・プリント配線板製造 ・工業包装 ・ダイカスト ・工場板金 ・機械保全 ・プラスチック成形 ・機械加工 ・めっき ・電子機器組立て ・金属プレス加工
電気電子情報関連産業 機械加工 ・仕上げ ・金属プレス加工 ・機械保全 ・プリント配線板製造 ・工業包装 ・プラスチック成形 ・工場板金・電子機器組立て ・塗装 ・めっき ・電気機器組立て ・溶接
建設業 型枠施工 ・土工 ・内装仕上げ/表装・左官・屋根ふき ・コンクリート圧送 ・建設機械施工 ・鉄筋継手・電気通信・トンネル推進工 ・鉄筋施工・とび・建築大工・配管・建築板金・保温保冷・吹付ウレタン断熱・海洋土木工
造船・舶用工業 溶接 ・仕上げ ・塗装 ・機械加工 ・鉄工 ・電気機器組立て
自動車整備業 自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備
航空業 空港グランドハンドリング (地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等)・航空機整備(機体、装備品等の整備業務等)
宿泊業 フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供
農業 耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)・畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)
漁業 漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理・収獲・処理、安全衛生の確保等)
飲食料品製造業 飲食料品製造業全般・飲食料品(酒類を除く)の製造・加工・安全衛生
外食業 外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)

【特定技能2号】

定義 特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
受入れ
可能な分野
建設、造船・舶用工業
※当面は2業種のみ
在留期間 上限なし
技能水準 熟練した技能 ※試験で確認
日本語能力
水準
業務に必要な日本語能力
その他要件 特になし
家族帯同 可(配偶者、子のみ)
支援対象可否 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外

 特定技能2号は1号からの移行となるため、その業種でのキャリアを通算5年間積み、熟練した能力を持つ人材です。そこからさらに日本で働くことを希望し、一定期間での更新を続ける限り、在留期間に上限はありません。そのまま10年を経過すると、日本に永住できる「永住者」の在留資格の申請も可能になるので、要件を満たすことで家族の帯同が認められる場合もあります

 特定技能制度は、生産性向上や国内人材確保の取り組みを最大限行ってもなお人手不足が深刻な産業分野のため、これまで「技能実習生」には従事させることのできなかった業務や単純作業も可能となった、魅力的な就労ビザ(在留資格)です。

人手不足がひっ迫している「介護」業界や、「外食(※「医療・福祉施設給食製造」を除く)」は特定技能1号であれば外国人を雇用することが可能ですが、技能実習生をこれらに従事させることはできません。
このほか、食品製造業の一部、例えばアイスクリームなどの一部の菓子、みそ・しょうゆなどの一部の調味料、納豆・豆腐などの製造や建設分野の吹付ウレタン断熱、海洋土木工は、技能実習が認められていない作業ですが、特定技能1号でであれば従事させることができます。
誰でもなれるわけじゃない!特定技能1号を取得できる人の条件とは?

外国人の国籍が、日本と二国間協定を締結した国の国籍であること
法務省の出入国在留管理庁が定める「特定技能外国人に関する基準」を満たしていること

日本と二国間協定を結んだ送り出し国は、現在9か国
もちろん、ベトナムもこの9か国にしっかり含まれています。

 さらに、詳細条件として次のとおり定められています。

特定技能1号、特定技能2号に共通の基準
18歳以上であること
健康状態が良好であること
退去強制の円滑な執行に協力する外国政府が発行した旅券を所持していること
保証金の徴収等をされていないこと
外国の機関に費用を支払っている場合は、額・内容を十分に理解して機関との間で合意していること
送出し国で遵守すべき手続が定められている場合は、その手続きを経ていること
食費、居住費等外国人が定期的に負担する費用について、その対価として供与される利益の内容を十分に理解した上で合意しており、かつ、その費用の額が実費相当額その他の適正な額であり、明細書その他の書面が提示されること

 これ以外にも、特定技能1号のみの基準、2号のみの基準があり、特定技能を取得できる人は、これらの非常に厳しい基準をクリアした、優秀な人材であるということが分かります。