本年度の最低賃金について、全国平均の時給を961円にして、前年度から31円上げる目安との報道が出ました。
物価高が続く中、賃金が上がることは歓迎ですが、制度関係者においては根本的に何も解決されない問題があります。
時給が31円上がった場合、多くの技能実習生(月間22日勤務)の場合、月給にして「5,456円」の増加となります(31円/時×176時間労働)
ありがたいか、ありがたくないかと言えば「ありがたい」と答えるでしょうが、現在の物価上昇に対して「5,456円」上がり、全ての問題が解決、「あ~良かった」とはならないでしょう。
特に外国人材の場合、「円安」問題がありますので、為替差額にもならず、現状維持どころか、数年前に聞いていた日本での出稼ぎとは実態が異なると困惑は続くでしょう。
また、全国一律に賃金が上がっても、都市部と地方の格差は縮まりません。送り出し機関に対する求人の段階から地方の不利な状況は続き、特定技能ともなれば、いくら愛着のある受入企業であっても、現実問題には勝てず、出稼ぎ目的の外国人材は、淡々と別れを告げ、都市部に集中します。
地方だから物価が安い…
このような現実はもはや崩壊していると思います。家賃の低さは実感できても、食料品などは物流コスト回収の為、都市部と地方の格差は無く、むしろ地方の方が割高な場合もあります。
対策として、地方が最低賃金にこだわらず、都市部にも対抗できるような賃金値上げを行えば良いと思う人もいるでしょうが、そう簡単にはいきません。
扶養の範囲内で働く日本人パートタイマーなどは、時給が上がっても、給与収入の上限がある為、労働時間を減らすしかない。経営者は賃金を挙げれば益々「労働力不足」に陥る矛盾が生じます。
人手不足が深刻な問題の国であるのに、休暇はしっかりと消化しなければいけない、残業は悪と労働時間の上限を超えた場合の処罰に怯えながら、労働力不足の問題を解決しなければならない。せめて都市部に対して一極集中しないためにも、外国人材の方には同一賃金で、地方も選択肢の1つに入れていただけるような対策を打たないと、外国人労働者でも地方に目が向かない状況には変化が生まれません。